【神経科学】ヒトの眼は1個の光子から検出できる
Nature Communications
2016年7月20日
ヒトの視覚によって単一の光子を検出できる確率は偶然より高いことが明らかになった。この結果は、ヒトの眼の検出限界に関する新たな手掛かりといえる。その詳細を報告する論文が、今週掲載される。
1940年代に行われた複数の研究で、ヒト被験者が最小で数個(5~7個)の光子の光信号でも検出できることが断定されたが、ヒトが単一の光子を認識できるのかどうかという疑問は解消されていない。その原因の1つは、これまでの実験で光子を発生させるために用いた光源との関連で実験上の制約があったことだ。
今回、Alipasha Vaziriたちは、量子光学技術を用いて、単一の光子を発生させる光源を設計し、3人の被験者による実験を行い、ヒトの視覚の検出限界を調べた。この光源系は、相関した1対の光子を発生させることができ、そのうちの1個は被験者の眼に照射され、もう1個は高感度カメラに照射された。毎回の試験では、1個の光子を含む光刺激と光が含まれていない光刺激が被験者に与えられ、いずれの刺激に光信号が含まれていたのかを被験者に回答させた。Vaziriたちは、合計30,767回の試験における被験者の成績をもとに、個人が1個の光子を含む小さな閃光と光子を含まない閃光を正しく識別する確率の平均値が偶然よりも高いことを明らかにした。
また、Vaziriたちは、今回の研究で得られた新知見の基盤となる網膜機構と脳回路機構が、今後の研究対象となると指摘している。
doi:10.1038/ncomms12172
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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