東アジアの海運が健康と気候に及ぼす悪影響
Nature Climate Change
2016年7月19日
東アジアで年間数万人が早世している原因の1つが、地域内の海運によって排出される物質による大気汚染の悪化であり、これが地域的、全球的な気候に著しい影響を与えてきた可能性があることを明らかにした論文が、今週のオンライン版に掲載される。多くの船舶は東アジア以外の国々を船籍地としていることから、この論文の著者は、世界各国が力を合わせて海上貿易に伴う排出物質の影響を軽減する活動を起こすことを提唱している。
東アジアは世界の海上貿易の約40%とつながっているため、この地域で生産された数多くの製品が船舶で全世界に輸送されている。今回、Huan Liu、Drew Shindell、Kebin Heの研究グループは、この貿易ネットワークに由来する温室効果ガス排出とその他の大気汚染物質が各地域の気候と人々の健康に与える影響を評価した。この研究グループは、約19,000隻の船舶に関する人工衛星データと地上観測を用いて、東アジア内とその周辺海域での船舶の動きを追跡調査した。
その結果、東アジアでの船舶の通航量が2005年比で2倍以上に増え、東アジアが2013年の全世界の海運による二酸化炭素排出量の16%を占めていることが分かった。また、この海運活動による大気汚染の悪化が、年間14,500~37,500人の早世の原因となっており、気候システムの短期的、長期的変化を引き起こしていることも判明した。この結果は、海運による温室効果ガス排出を抑制することが、気候変動に対処し、海上貿易が地域住民の健康に及ぼす影響を減らす上で重要なことを示している。
同時掲載されるJames CorbettのNews & Views記事では、「この論文の著者の最先端の方法と船舶活動に関する質の高い人工衛星観測と地上観測の統合は、近年の地球規模の取り組みに対する重要な貢献となり、ヨーロッパでの地域研究と同様に海運の健康リスクに関する過去の評価を改善するものである」と述べられている。
doi:10.1038/nclimate3083
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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