【惑星科学】ケレスに大きなクレーターがないという謎
Nature Communications
2016年7月27日
火星と木星の間にある小惑星帯に位置する準惑星ケレスに大きな衝突クレーターが見られないという奇妙な事実はケレスの内部進化と関連しているという考えを示す論文が、今週掲載される。
ケレスの地表には、小さなクレーターが数多く見られるが、直径が約280 kmを超える大きなクレーターは存在しないことが知られている。一方、惑星が微惑星(惑星の基本となる構成要素)から進化する過程に関する衝突モデルでは、過去45億5000万年の間にケレスの地表に直径400 km超のクレーターが10~15個形成されたと予測されている。同様に、小惑星ベスタとの比較からは、ケレスに直径400 km超のクレーターが少なくとも6~7個存在すると推定されている。このように大きなクレーターが明らかに存在していない理由は、これまで説明されていなかった。
今回、Simone Marchiたちは、NASAの宇宙探査機「ドーン」によるケレスの観測データを用いて、ケレス全球におけるクレーターの分布を調べ、ケレスの進化に関する衝突シミュレーションを実行した。このシミュレーションでは、主小惑星帯におけるケレスの現在位置が45億5000万年間変わっていないことが前提条件とされた。Marchiたちが用いたモデルからは、直径が100~150 kmを超えるクレーターの存在が予測されているが、Marchiたちは、そのようなクレーターがほとんど存在しないことを明らかにし、著しく多数の大きなクレーターが地質学的な時間スケールで原形をとどめないほど破壊されてしまったと結論づけている。その原因について、Marchiたちは、ケレスの特異な組成と内部進化である可能性が非常に高く、クレーターの縁部が平滑になったのは火山過程と地形的過程によっている可能性があるという考えを提唱しており、小さなクレーターの空間密度が高いためにクレーターの縁部が不明瞭になった可能性も指摘している。
さらにMarchiたちは、ケレスの地表に直径800 kmのくぼみが1つ、もしかすると2つ存在していることを示す地形的証拠を明らかにし、このくぼみがケレスの歴史の初期に起こった大規模な衝突による衝突盆地の名残である可能性を示している。
doi:10.1038/ncomms12257
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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