ヨーロッパ系の人々における大うつ病性障害の遺伝的関連
Nature Genetics
2016年8月2日
ヨーロッパ系の人々の大うつ病性障害(MDD)に関連する15のゲノム領域が発見された。今回の研究で、アジア系以外の人で、大うつ病性障害との有意な関連が初めて明らかになり、これにより大うつ病性障害の生物学的特性の解明がさらに進むことになるだろう。
大うつ病性障害は、最も一般的な精神疾患の1つで、抑うつ気分、睡眠パターンの変化、食欲の変化、疲労といった重篤な症状がある。大うつ病性障害には遺伝要因が含まれることを示す強力な証拠があり、その一例として、漢族中国人女性を対象とした研究で、大うつ病性障害との有意な関連を示す2つの遺伝的バリアントが同定された最近の研究がある。しかし、ヨーロッパ系の人々を対象とした研究ではこれまで、大うつ病性障害と有意に関連するゲノム領域が全く見つかっていなかった。
今回、D Hinds、R Perlis、A Winslowたちの研究グループは、過去に大うつ病性障害の診断ないしは治療を受けたことがあると自己申告した人(121,000人以上)と、うつ病の病歴がないと自己申告した人(338,000人以上)を対象として、全ゲノム関連解析を実施した。この研究では、被験者全員が、一般消費者向けのゲノム解析を行う企業の顧客で、同社の研究イニシアチブへの参加を申し出ていた。この研究の結果、大うつ病性障害と統計的に有意な関連を示す15のゲノム領域が同定された。そして予備的解析により、これら15のゲノム領域には、神経系で発現する遺伝子や、神経の発達に関与する遺伝子が多いことが分かった。さらには、大うつ病性障害に関連する座位として同定されたものと過去に他の精神疾患(統合失調症を含む)に関連する座位として同定されたものが一部重複していることも明らかになった。
doi:10.1038/ng.3623
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