Research Press Release
ブラックホールは完全にブラックではない
Nature Physics
2016年8月16日
ブラックホールがある種の放射を放出することを示す新たな実験的証拠が、今週報告される。今回の研究は、光ではなく音が脱出できないというブラックホールの音響モデルを用いて、ホーキング放射に似た放射を観測している。
スティーヴン・ホーキングは1974年に、量子効果によってブラックホールは完全にブラックではなくなり、今日ではホーキング放射と呼ばれているある種の放射を放出するに違いないという理論を立てた。しかし、放出される放射の量が極めて少ないため、実際の天体物理学的ブラックホールではまだ観測されていない。原子のボース・アインシュタイン凝縮体に生成される音響ブラックホールは、ホーキング放射に似た放射を実験室で観測する可能性をもたらす。
今回J Steinhauerは、この切望されているホーキング放射に似た放射をそうした系で見ることができるという、これまでで最も説得力のある主張をしている。これまでの取り組みとは違って、ホーキング放射の極めて重要な特徴である、ブラックホールから脱出する粒子がブラックホールに引き込まれるパートナー粒子と量子エンタングルしていることを示す証拠を、Steinhauserは提示している。ホーキングペアのこうしたエンタングルメントが主張されたのは、これまでで今回が初めてである。
doi:10.1038/nphys3863
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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