Research Press Release
【動物学】ずるい雄をさりげなく排除する
Nature Communications
2016年8月17日
卵を水中に放出した後でもその卵を受精させる精子の決定に影響を与えることのできる、体外受精の魚類の雌について報告する論文が、今週掲載される。このように交配後でも交配相手のえり好みをする能力は、体内受精する魚種だけのものだとこれまで考えられていた。
ベラ科の魚類の一種オセレイテッドラス(Symphodus ocellatus)の場合、巣作りをし、仔をよく世話する雄が交配相手として雌から強く好まれる。その一方で、こうした世話をせず、自分で雌に対する求愛もしない‘sneaker male(ずるい雄)’が存在している。ずるい雄は、巣作りをする雄が雌と交配している時にそっと近づき、大量の精子を放出して、一定の割合の卵を受精させようとするのだ。
今回、Suzanne Alonzoたちは、オセレイテッドラスの雌が、卵を取り囲む卵巣液を分泌することで、どの雄の精子によって卵の受精を行うのかを制御していることを実証した。今回の研究では、この卵巣液が、卵に向かって移動する精子の速度と精度を高めて、精子の数の重要性を低下させ、精子の速度の重要性を高めることが明らかになった。その結果、卵巣液は、ずるい雄より精子の産生量が少ないが、速く移動する精子を産生する巣作りをする雄を有利にしている。
以上の新知見は、体外受精をする魚種であっても、雌が交配後に交配相手のえり好みができる場合があることを実証している。
doi:10.1038/ncomms12452
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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