【生物科学】人口増加ほどの勢いで増えていなかった人間のエコロジカル・フットプリント
Nature Communications
2016年8月24日
我々が地球に及ぼした物理的影響(いわゆる「ヒューマン・フットプリント」)が1992~2009年の人口増加ほど急速に伸びなかったことを明らかにした論文が、今週掲載される。一方で、この論文は、ヒューマン・フットプリントは低中所得国だけでなく、生物多様性が最も高い地域でも急速に伸びたことも明らかにしている。
ヒューマン・フットプリントとは、主に都市化や農業目的での土地転換による自然環境に対する人間の物理的影響の程度を意味する。ヒューマン・フットプリントが最初に測定されたのは1990年代のことで、当時利用可能なデータを用いて全球マップが作成された。しかし、その後の人口規模の拡大と世界経済の成長を受けて、ヒューマン・フットプリントのマップを更新することが求められていた。
今回、Oscar Venterたちは、さまざまな人間活動の影響(構築された表面部分、道路、耕作地と牧草地、夜間照明、人口密度など)に関する過去に発表されたデータセットを用いて、新しいヒューマン・フットプリントの全球マップを作成し、16年間に生じた変化を測定した。その結果分かったのは、1992年から2009年の間に人口規模が23%増加したが、ヒューマン・フットプリントの面積加重平均値の増加が9%に留まったことだ。また、ヒューマン・フットプリントが減少した地域は非常に少なかったが、豊かな国ほど増加率は低かった。さらに絶滅危惧種の個体数の多い地域は、人間が環境に加える圧力が強く、絶滅危惧種が数多く生息し、人間活動の影響を受けなかった地域は、ボルネオ島、中央アジアの砂漠地帯などわずかだった。
今回の研究では、対象期間中に人間活動の影響が低下した地域が明らかになったが、今後、環境的ニーズと社会的ニーズをバランスよく実現するという課題に、新興経済国や地球上で最も生物多様性の高い地域で集中的に取り組むことになる可能性も明確になった。
doi:10.1038/ncomms12558
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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