Research Press Release
【がん】タスマニアデビル顔面腫瘍病に対する抵抗性が進化していることを示す証拠
Nature Communications
2016年8月31日
タスマニアデビル(Sarcophilus harrisii)がデビル顔面腫瘍性疾患という悪性腫瘍に対する抵抗性を進化させている可能性を報告する論文が、今週掲載される。
デビル顔面腫瘍性疾患は、感染性がんの一種であり、罹患したタスマニアデビルの大部分が死んでいる。そのためにタスマニアデビルの個体数は、過去20年間に80%以上減少した。この疾患の疫学モデルからは、タスマニアデビルの絶滅が近いことが示唆されているが、すでに絶滅していると予測されていた複数の個体群でタスマニアデビルは今も生き続けている。
今回、Andrew Storferたちは、複数の生息地のタスマニアデビルの遺伝的特徴をデビル顔面腫瘍性疾患の発症前後の時点で調べた。その結果、発症前後のサンプルで2つのゲノム領域に変化が見られることが判明した。この領域には、7つの遺伝子が存在し、そのうちの5つがヒトのがんと免疫機能に関連していることが知られている。
今回の研究で得られた知見からは、タスマニアデビルが短い期間(4~6世代)でデビル顔面腫瘍性疾患に対する抵抗性を迅速に進化させたことが示唆されている。
doi:10.1038/ncomms12684
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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