【惑星科学】火星の衛星「フォボス」上のクレーター鎖の起源
Nature Communications
2016年8月31日
火星の衛星「フォボス」にある奇妙なクレーター鎖は、これまでに起こった複数回の衝突によってフォボスから放出された物質が火星の周囲を軌道運動した後にフォボスに再衝突したことで形成した可能性が高いとする研究結果を報告する論文が、今週、掲載される。この新知見は、我々の太陽系に存在する衛星の地史の新たな手掛かりになっている。
フォボスは、火星に近接した軌道を周回しているため、火星の重力による非常に強い潮汐力の影響を受けて、地表に大きな膨らみと線状構造が形成している。ところが、こうした線形溝とクレーター鎖の多くは、潮汐力に基づいて予測された応力的特徴の方向と合っておらず、潮汐力以外の原因もあることが示唆されている。
今回、Michael NayakとErik Asphaugは、1次衝突によって生じた放出物の軌跡のモデルを作成し、フォボス上のクレーター鎖が1.5次衝突という特異的な衝突によって形成されたものであり、フォボスのクレーター形成事象の際に放出された物質がフォボスの重力から逃れ、一定の期間、火星を周回し、フォボスに再衝突することを発見した。この過程が繰り返される間にこのような衝突によって1.5次クレーター鎖が形成されたという考えをNayakとAsphaugは提示している。
1.5次衝突は、一部のクレーター鎖の原因である可能性が高いが、フォボスに作用する非常に強い潮汐力もフォボスの地表の特徴に大きな影響を及ぼしていることをNayakとAsphaugは指摘している。
doi:10.1038/ncomms12591
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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