Research Press Release
【神経科学】ヒトは観察からどのようにして学ぶのか
Nature Communications
2016年9月7日
ヒトが観察学習をする際に情報処理が起こる脳の領域を、今週掲載される論文が明らかにしている。
ヒトは、他人が行う行動と結果を観察することを通じて学習することができる。従来の研究で、社会的学習には、社会性と報酬の処理に扁桃体・吻側内側前頭前皮質・吻側前帯状皮質といった3つの脳領域が関係するとされていた。しかし、これらの領域内の個々のニューロンが、単に学習に関わるのか、それとも他人を観察することによる学習に関わるのかは、分かっていなかった。
今回Michael Hillたちは、カードゲームを行っている10人の脳の単一ニューロン記録を行って解析した。このゲームでは、被験者は2つの山のどちらかからカードを引くが、一方の山は高率(70%)に勝ちカードを含み、他方の山は低率(30%)にしか含まない。被験者は、自分でカードを引き、また他人が引くのを見る。従って、自分の経験による学習も、他人を観察することによる学習も行える。ゲーム中の単一細胞電極記録では、扁桃体と吻側内側前頭前皮質のニューロンは勝敗に応答した。しかし、吻側前帯状皮質のニューロンは、自分で選択したときか他人の選択を観察したときかによって異なる応答を示した。
これらの結果から、観察学習では吻側前帯状皮質が特異的な役割を担うことを示す最初の単一細胞レベルの証拠が得られた。
doi:10.1038/ncomms12722
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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