大豆に対する二酸化炭素濃度上昇の恩恵が枯渇する
Nature Plants
2016年9月6日
二酸化炭素(CO2)濃度の上昇に付随することが予想されている干ばつの激化により、CO2>レベルの上昇による大豆の作物収量増加は完全に打ち消される可能性があると報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。
これまでの研究では、今世紀中の大気中CO2濃度の上昇が大豆の作物収量を刺激して(「CO2施肥」と呼ばれる効果)、将来の食料生産に対する干ばつ激化の悪影響を相殺することが示唆されていた。今回の研究で、Andrew Leakeyたちは、米国中西部イリノイ州の施設で、連続8年間にわたって大豆の実用品種を栽培した。研究チームは、実験区画を取り囲む配管からCO2ガスを放出することによって高レベルのCO2を維持し、植物体の上に設置された収納可能な雨よけで雨滴を捕捉することによって干ばつに似た条件を作り出した。
その結果、十分な降雨があった年にはCO2施肥の結果として大豆の収量が最大22%増加したが、乾燥した年にはこの効果がほとんど消失したことが分かった。これについて研究チームは、乾燥シグナルに対する気孔(葉に存在する小孔で、気体と水がこれを通って出入りする)の感受性が上がったこと、および乾燥した土壌の窒素貯蔵量が減少したことによるものとし、米国中西部以上に乾燥した地域でそうした影響がさらに重大なものになる可能性を示唆している。
同時掲載のNews & Views記事で、Colin Osborneは、「今回の研究の重要な結論は、世界の大豆収穫量の25%以上を生産する地域で、世界有数の重要作物の収量に関して、将来の干ばつ事象がCO2濃度上昇の恩恵を脅かす可能性があるということである」と述べている。
doi:10.1038/nplants.2016.132
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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