【医学研究】副作用の少ないアルツハイマー病治療薬への道
Nature Communications
2016年10月12日
1つのクラスのアルツハイマー病治療薬を改良して、これまでより副作用を減らすために利用しうる新しい方法について報告する論文が、今週掲載される。この論文では、BACE1阻害剤が眼に副作用を起こす原因が説明され、この阻害剤を投与される動物の眼に副作用を生じるかどうかを予測する検査についても説明されている。
アミロイド前駆体タンパク質βサイト切断酵素1(BACE1)は、アルツハイマー病患者の脳内に蓄積することが知られるタンパク質であるアミロイドβの形成に関係している。BACE1の阻害剤はアルツハイマー病の進行を遅らせる効果が期待されており、現在、新薬開発が進められているが、そうした新薬候補のいくつかが臨床試験で失敗している。その原因の1つが、有毒な化合物が眼に蓄積するという副作用である。
今回、Douglas Johnsonたちは、化学プロテオミクスという手法を用いて、BACE1阻害剤のうちの1種類に標的外作用があり、BACE1に類似したタンパク質であるカテプシンDも阻害してしまうことを明らかにした。また、Johnsonたちは、培養ヒト細胞で測定されたカテプシンDの阻害と動物モデルで観察されたBACE1阻害剤を原因とする眼の副作用とが強く関連していることを明らかにした。さらに、Johnsonたちは、いくつかの既知のBACE1阻害剤のスクリーニングを行って、眼に副作用を起こさない特定の化合物を同定した。
Johnsonたちは、以上のデータが副作用の少ないアルツハイマー病治療薬の開発に役立つという考えを示している。
doi:10.1038/ncomms13042
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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