青色の葉が日陰の植物の生育を助ける
Nature Plants
2016年10月25日
日陰で生育する植物が、光沢のある青色の葉を利用することで量子力学を巧みに操って光合成を強化し、環境内の極端な弱光条件に適応していることが、今週のオンライン版の掲載論文で発表される。
植物体のために、葉緑体は日光をとらえてそれを化学エネルギーに変換する。光はまず、さまざまなサイズで大きく積み重なった「チラコイド」と呼ばれる膜に吸収される。マレーシアの熱帯林の分厚い林冠の下にみられるBegonia pavoninaは、イリドプラスト(iridoplast)という特別な葉緑体を葉の表層に有することにより、葉が青色に輝いている。
Heather Whitneyたちは、B. pavoninaのイリドプラストを光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察し、高度に規則的であるという点でその内部構造が通常の葉緑体と異なっていることを発見した。イリドプラストは、間隔が規則的な3~4個のチラコイドの積み重ねがフォトニック結晶に似ており、波長430~560 nmの光を強く反射するため、葉が青色の光沢を放っている。マレーシアの森林でその植物の葉まで届く少量の光は、主としてスペクトルの緑色~赤色側のものである。著者たちは、イリドプラストがこの特定の波長を植物の光合成装置へ集中させ、光合成効率を5~10%向上させていることを明らかにした。
葉緑体は一般には単に光を化学エネルギーへ変換するだけの構造体と考えられているが、光の伝搬および捕捉を制御する構造体としてもとらえるべきである、と研究チームは結論付けている。
doi:10.1038/nplants.2016.162
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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