男女平等と病原体の罹患率の関係
Nature Human Behaviour
2016年11月15日
感染症の罹患率の低下が、米国および英国において、過去数十年間にわたる男女平等の拡大と関連しているとの報告が掲載される。研究では、ワクチン接種、医療無料化、公衆衛生、水処理といった感染症を抑制する取り組みが、世界的に男女平等を拡大する可能性があることが示唆されている。
異なる社会間にみられる男女差、そして社会内にみられる男女差については詳しく調べられているが、男女平等の程度の変化をもたらす要因についてはほとんど分かっていない。
Michael VarnumおよびIgor Grossmanは、米国については1951~2013年の、また英国については1945~2014年のアーカイブデータを使って、感染症、リソースの不足、戦争、気候ストレスの4つの重要な生態学的側面が、男女平等に経時的に及ぼす影響を調べた。その結果、検討した変数の中で、病原体の罹患率が、男女間の不平等と最も強い関連を示すことが明らかとなった。米国でも英国でも、病原体罹患率の変化は男女間不平等の変化に先立っていたことから、2つの変化に因果関係がある可能性が示唆された。またVarnumとGrossmanは、広い意味での伝統的な文化的規範および文化的態度によっては、病原体と男女間の不平等との関連を説明できないこと、一方で、生活史戦略が男女間不平等に対する病原体の影響を仲介していることを見いだした。すなわち感染症のレベルが低いと、人々はより緩やかな生活史戦略をとる可能性が高くなる。女性の場合、これは、教育および職業上の人生が優先されて、子どもをもうける時期が遅れることを意味する。
著者たちは、今回の解析は因果関係に関して明確な結論を下すものではないものの、病原体罹患率が重要な役割を果たすことを示唆すると指摘している。
doi:10.1038/s41562-016-0003
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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