【医学研究】高齢マウスと若齢マウスの血液交換方法の簡素化
Nature Communications
2016年11月23日
新しい方法による若齢マウスと高齢マウスの血液交換について説明する論文が、今週掲載される。齢に差のあるマウス間での単回の血液交換から数日内に組織の機能が変化することが明らかになったのだ。この輸血システムは、組織の老化を研究する際の有益な手段になると考えられている。
若齢マウスの血液の成分が老齢マウスの組織を若返らせる一方で、老齢マウスの血液が若齢マウスの組織に有害な影響を及ぼすことがこれまでの研究で明らかになっている。しかし、これらの実験では異時性並体結合(2匹の動物の血液循環を数週間にわたって結合するという複雑な外科的処置)が用いられることが多い。異時性並体結合では、血液だけでなく、臓器など他の身体要素が共有され、老齢マウスが若齢マウスの肺、免疫系、心臓、肝臓と腎臓を利用でき、若齢マウスが老齢マウスの身体も維持しなければならない。今回、Irina Conboyの研究チームは、マウス間で血液の交換だけが行われ、血液交換の結果に対する臓器の共有の影響を排除した簡素な輸血システムを設計した。
Conboyたちは、若齢マウスの血液が老齢マウスの損傷した筋肉の修復を増進する一方で、老齢マウスの血液が若齢マウスにおける新しい脳細胞の形成と肝細胞の再生を阻害することを明らかにした。こうした影響は、血液交換から6日以内に測定された。一般に老齢マウスの血液の阻害作用は、若齢マウスの有益な影響よりも顕著だった。
Conboyたちは、この論文で報告された血液交換システムが異時性並体結合と比べていくつかの実用的利点(例えば、所要時間の短縮と侵襲性の低さ)があることを指摘し、これにより、血液によって運ばれて組織の老化または若返りに寄与する因子を同定するための十分に管理された研究が可能になるという考えを示している。
doi:10.1038/ncomms13363
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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