【エピジェネティクス】1型糖尿病の環境的要因の解明
Nature Communications
2016年11月30日
環境が1型糖尿病の発症にどのように寄与しているのかという論点に関する手掛かりが見つかったことを報告する論文が、今週掲載される。これは、病気の発症に対するエピゲノムの寄与を調べた研究の成果で、エピゲノムとは、遺伝子の発現状態を変え、環境的要因によって修飾されるゲノム上のマーカーの集合体のことだ。この研究では、免疫遺伝子のエピジェネティックな変化が1型糖尿病患者において同定されたが、このエピジェネティックな変化が1型糖尿病にどの程度関係しているのかを正確に解明するには、さらなる研究が必要とされる。
1型糖尿病の罹患率は、この10年間で急上昇し、この疾患の発症に環境的要因(例えば、感染症や食事)が大きな役割を果たしている可能性が示唆されている。科学者と臨床医が複雑な疾患の発症を研究する場合に、遺伝的要因の役割と環境的要因の役割をはっきり区別することが課題となっていた。我々の環境は、エピジェネティックマークという変化をゲノムに生じさせて、細胞の機能を変化させるため、エピゲノムの研究は、細胞の働きに対する環境の影響を測定するための強力な手段となっている。
今回、Dirk Paul、David Leslieたちの研究チームは、1型糖尿病の発症における環境の役割を明らかにするため、多数の一卵性双生児(1人が健常者で、もう1人が1型糖尿病患者)からなる集団を調べた。Paulたちは、一卵性双生児のゲノムとエピゲノムの両方を調べて、比較し、糖尿病患者のエピゲノムの変化を明らかにした。こうした変化の多くは、遺伝的要因によって説明できなかった。そして、エピゲノムの変化の一部は、免疫細胞機能の調節と関連していた。1型糖尿病が自己免疫疾患であることから、今回の研究によって得られた知見には期待が持て、1型糖尿病の発症に関する手掛かりとなる可能性がある。
ただし、こうしたエピジェネティックな変化が1型糖尿病の発症に寄与する機構とエピジェネティックな変化に影響を与えている可能性のある環境的要因を明らかにするには、さらなる研究が必要となる。
doi:10.1038/ncomms13555
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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