Research Press Release
【天文学】冥王星の「凍った心臓」に関する新しい学説
Nature
2016年11月17日
準惑星の冥王星の表面に「スプートニク平原」という直径約1,000 kmのハート型の盆地が観測されたが、今週掲載される2編の独立した論文には、スプートニク平原の起源についての考えが示されている。これらの論文によれば、スプートニク平原が氷で満たされているために冥王星が向きを変え、地殻内に亀裂と張力が生じており、このことは表面下に海洋が存在していることを指し示しているとされる。
James Keaneの研究チームは、スプートニク平原の現在位置が潮汐力によって決まったという考えを提唱しており、スプートニク平原が氷で満たされているために冥王星とカロンの潮汐相互作用が変化して冥王星の向きが変わったと推測している。Keaneたちのモデルは、冥王星の向きが変わると地殻に応力がかかって断層網が形成され、峡谷や山脈が生まれたことを示している。
一方、Francis Nimmoの研究チームも冥王星が向きを変えたと推測されることの意味合いについて検討している。Nimmoたちは、スプートニク平原の現在位置を潮汐力で説明できる点には賛成しているが、この過程が起こるためには冥王星の表面下に海洋が存在している必要があるという考えを示している。
まとめると、この2つの研究は、スプートニク平原の形成原因とスプートニク平原によって冥王星がどのように形作られたのかという点に関して新たな手掛かりをもたらしていると言える。
doi:10.1038/nature20120
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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