Research Press Release

【天文学】冥王星の「凍った心臓」が作り出した盆地

Nature

2016年12月1日

冥王星の表面に観測されたハート型のスプートニク平原は、直径1,000 kmの盆地で、冥王星で最も寒冷な地域に位置するが、ここに氷が必然的に蓄積したとする研究報告が、今週掲載される。これまでの研究では、スプートニク平原が天体の衝突によって形成した可能性が示唆されているが、今回のモデル研究では、むしろ蓄積した氷の重みでスプートニク平原内に盆地ができたことが示唆されている。この知見は、スプートニク平原の形成史に関する新たな情報だ。

今回、Douglas Hamiltonの研究グループは、コンピューターシミュレーションを行い、冥王星の衛星の1つであるカロンの形成から100万年以内というタイミングで、冥王星において氷の堆積物が一か所に集まって氷冠を形成したことを明らかにした。この地域で霜が蓄積し始めると、太陽光の反射量が増え、気温が低下し、氷の堆積が進んだ。この現象は、アルベド効果の暴走として知られる。そして、氷の重みで地殻が沈み込み、盆地が独自に形成されたというのだ。

また、Hamiltonたちは、この地域での氷の蓄積とカロンからの潮汐力によって、この氷冠がカロンの真向かいの経度に位置するように冥王星が回転していることも明らかにした。さらに、Hamiltonたちは、スプートニク平原の氷冠が、その形成以降、太陽系の歴史を通じて、体積を徐々に減らしつつも安定しているという見方も示している。

doi:10.1038/nature20586

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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