人間行動:対人暴力の起源は進化系統樹の中にあるかもしれない
Nature
2016年9月29日
個体間の致命的な暴力は、霊長類に固有の特徴であり、ヒトはそれを進化の過程で受け継いだことを示した論文が、今週掲載される。
同種の個体に対する暴力行為は、特定の哺乳類(例えば霊長類)に一般的に見られるが、コウモリ、クジラなど他の動物に関してはほとんど知られていない。ただし、ヒトの攻撃行動が、進化系統樹におけるヒトの位置にどの程度影響されているのかは、はっきりしていない。ヒトの暴力の心理学的、社会学的、進化的起源について、研究者は長い間頭を悩ましてきた。それは、暴力における文化的要素と非文化的要素の相対的重要性を分けて考えられなかったことによる。
今回、Jose Maria Gomezたちは、約5万年前から現在までの哺乳類(分類学上の137科、1024種)とヒト集団(約600)における400万件以上の死亡例からデータをまとめ、致命的な暴力の占める割合を定量化した。Gomezたちは、さまざまなヒトと哺乳類の情報源からデータを取り出し、系統発生学的比較研究ツールを用いて、ヒトの死亡例全体において対人暴力を原因とする死亡例の割合を約2%と推定した。この数値は、先史時代のヒトに関する観察値と一致している。
さらにGomezたちは、進化的に推定された場合とヒトの歴史において経験的に観察された場合で致命的暴力の占める割合がどのように異なっているのかを調べた。その結果、ヒトの歴史を通じて致命的な対人暴力の占める割合が変動し、そのほとんどがヒト集団の社会政治的組織化の変化に関連していることが明らかになった。この研究結果は、ヒトによって進化的に受け継がれた致命的暴力が文化の影響を受けることを示唆している。
doi:10.1038/nature19758
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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