代謝:ミトコンドリアDNAと核DNAの「ミスマッチ」がもたらす長期的影響
Nature
2016年7月7日
このほど行われたマウスの研究で、ミトコンドリアDNAの塩基配列のわずかなちがいが代謝と老化に重大な影響を及ぼすことが示唆されている。この新知見は、ミトコンドリア置換療法の分野で重要な意味をもつ可能性があり、この研究結果を報告する論文が、今週、Natureに掲載される。
真核生物は、細胞内の核とその周囲にある数多くのミトコンドリア(エネルギーを産生する小器官)の2か所にDNAを貯蔵している。今回、Jose Antonio Enriquezたちは、同じ核DNAを有するがミトコンドリアDNAが異なっている数々のマウスの系統を特別に作製して研究を行った。これらのマウスの幼若期には明白な影響がほとんど見られなかった一方、老化すると、ミトコンドリアの機能、インスリンシグナル伝達、肥満と老化に関連する指標(例えば、テロメアの短縮)に差が生じることがわかった。こうした差は、マウスの健康と寿命に両方に影響していた。
ミトコンドリア置換療法は、欠陥のあるミトコンドリア遺伝子が母から子へ受け継がれないようにする可能性を秘めているが、由来の異なる核DNAとミトコンドリアDNAを「うまく組み合わせる」ことの長期的影響は明らかになっていない。今回の研究では、疾患の原因になっていないミトコンドリアDNAのバリアントが健康に影響を及ぼすことが明らかになり、この点に注意を要することが明確に示された。Enriquezたちは、今後のミトコンドリア置換療法において、レシピエントのミトコンドリアDNAと遺伝的に近いものをドナーのミトコンドリアDNAとして使うように配慮すべきだと提案している。
doi:10.1038/nature18618
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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