【神経科学】新しいヒトの脳のマップ
Nature
2016年7月21日
新しいヒトの脳のマップが作成され、これまでに報告されていなかった大脳皮質の約100の領域が同定された。この研究成果を報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。
ヒトの脳の微細構造アーキテクチャー(または局所的構造)と接続性と機能の正確な高分解能マップの開発という神経科学の目標は、数々の技術的課題のために長い間達成されていなかった。既存のマップの大部分は、そのうちのわずか1つ、あるいは他の関連する神経学的特性に基づいたものであり、少人数の人々がもとになっている。こうした制約のためにマップが「不明瞭」になり、全ての人々における再現ができていなかった。
今回、Matthew Glasser、David Van Essenたちは、ヒトコネクトームプロジェクトで収集された210人の健康な若年成人の複数タイプの画像データを用いて、正確な脳のマップを作成した。このマップでは、脳の各半球が180の特定の皮質領域に分割され、そのうちの97の領域が新たに報告された。そして、Glasserたちは、機械学習法を用いて、別の210人の参加者のグループでこのマップの妥当性確認を行い、このマップにより、個人差にかかわらず、これらの皮質領域が正確に同定されることを報告している。
この神経解剖学的マップは、ヒトコネクトームプロジェクト・マルチモーダルパーセレーション・バージョン1.0(HCP-MMP1.0)と呼ばれ、今後精緻化されることが予想されているが、Glasserたちは、このマップがロバストであり、誰にでも適用できるため、脳外科手術での臨床応用の可能性があり、非ヒト霊長類との比較によってヒトの認知機能の進化に関する新たな知見も得られる可能性があると考えている。
同時に掲載されるThomas YeoとSimon EickhoffのNews & Views記事では、今回の研究でヒトの脳マッピングが大きく前進したことが指摘されている。そして「今回もたらされた解剖学的枠組みを利用し、他のヒトの脳マッピングの方法と比較し、定義された各領域について機能関連情報と疾患関連情報を充実できるかどうかは、研究者次第である」という結論が示されている。
doi:10.1038/nature18933
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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