【神経科学】マウスの社会的行動と免疫が結びついている
Nature
2016年7月14日
脳を取り囲む保護組織に含まれる免疫細胞がマウスの社会的行動の制御に必要なことを明らかにした論文が、今週のオンライン版に掲載される。今回の研究は、免疫機能不全が、多くの神経疾患と精神疾患において観察される社会性障害の基盤となる神経回路の障害の一因になっている可能性を示唆している。
免疫応答の変化は、自閉症、統合失調症などの疾患と関連するものと考えられてきた。これまでの研究で、末梢神経系の免疫が学習と記憶に影響を及ぼすことが明らかになっているが、こうした疾患の特徴である社会性障害を引き起こす免疫系と神経回路の相互作用については十分に解明されていない。
今回、Jonathan Kipnisたちは、適応免疫(獲得免疫)に欠陥のあるマウスが、初めて見る物体よりも初めて見るマウスを調べようとする傾向を示さず、脳の前頭皮質領域間が過剰に接続しており、自閉症患者に似ていることを明らかにした。そして、Kipnisたちは、マウスにリンパ球を注入することで、社会性障害から回復させ、脳内回路の接続を正常な状態に戻した。この実験では、ニューロンがインターフェロンγ(免疫細胞から分泌される物質で、主に病原体と戦うと考えられている)に直接応答して、社会的行動に関係があるとされる神経回路の活動を制御することが実証された。さらに、Kipnisたちは、こうした免疫と社会的行動の相互作用がラット、ゼブラフィッシュ、ショウジョウバエにも見られることを報告している。Kipnisたちは、高等生物種において抗ウイルス応答が社会性と共進化した可能性があり、こうした経路が高速で進化する病原体によって操作された可能性があると考えている。
doi:10.1038/nature18626
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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