Research Press Release

【保全】熱帯雨林の人為的撹乱を避けることによる生物多様性保全

Nature

2016年6月30日

ブラジルのアマゾン川流域の生物種2,000種以上の評価が行われ、人間の活動による森林の撹乱が、森林破壊と同程度の生物多様性の減少をもたらすことが明らかになった。今回の研究では、地球上に残っている熱帯林の生物多様性を森林被覆率の維持にとどまらない地域スケールの緊急介入によって守ることが求められている。この研究結果について報告する論文が、今週掲載される。

森林破壊を減らすことは、ほとんどの生物多様性保全戦略の焦点になっている。例えば、ブラジルの森林法では、アマゾン川流域の土地所有者が森林被覆率80%を維持することを法的に義務付けられている。しかし、残存する森林の生物多様性に対して、さまざまな撹乱(択伐、野火、景観改変など)が及ぼす複合的な影響は解明されていない。

今回、Jos Barlowたちは、ブラジル北部のアマゾン川流域のパラー州全体を対象として、1,538の植物種、460の鳥類種、156種のフンコロガシ種のオカレンスデータ(生物分布情報)を評価した。その結果分かったのは、撹乱された森林がかなりの保護価値を保持しているものの、撹乱が生物多様性に与えた影響が、パラー州の特別保護区域以外の区域で92,000~139,000 km2の原生林が失われることによる影響に相当することだった。Barlowたちは、たとえ森林破壊が法定限度の20%にとどまっていても、残存する森林では保護価値のわずか46~61%しか保持できない可能性があると結論づけている。

同時掲載されるDavid EdwardsのNews & Views記事では、「生物多様性が消滅する危機は、現在認められている以上に深刻化している可能性があるが、これまでよりすぐれた管理戦略を採用すれば、解決方法を得られる可能性は残っている」という結論が示されている。

doi:10.1038/nature18326

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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