【生態】気候変動によって生態系の同調性が乱れる恐れ
Nature
2016年6月30日
食物連鎖のレベルの異なる生物種の間には気候変動に対する感度に系統的な差異が認められることが、このほど実施された大規模研究によって明らかになった。こうした差異があると、繰り返し起こる生物学的現象(フェノロジー)の季節的タイミングの同調性が広範囲で乱れ、その結果、生態系機能に影響が及ぶ可能性があることが今回の研究から示唆されている。この研究結果を報告する論文が、今週掲載される。
フェノロジー(例えば、繁殖、渡り)のタイミングなど、生態系のさまざまな長期的変化の原因は気候変動にあると考えられてきた。今回、Stephen Thackerayたちは、1960~2012年にわたる3つの食物連鎖レベル(栄養段階)の陸生種と水生種(計812種)のフェノロジー情報を含む10,003のデータセットを解析し、これらのデータセットを各地域の気温と降水量のデータと照合して、気候感度の差異を定量化した。
Thackerayたちは、生物種の気候感度の方向性と大きさとタイミングについて、分類群と栄養段階群によって著しい差異のあることを明らかにした。とりわけ二次消費者(例えば、捕食性の鳥類、魚類、哺乳類)の気候の変化に対する感度は、他の栄養段階群より常に低かった。そしてThackerayたちは、2050年に一次消費者(例えば、種子食の鳥類、草食性昆虫)が、他の栄養段階の生物種の2倍以上の幅でフェノロジーを変化させ、前者が平均6.2日早期化するのに対して後者は2.5~2.9日早期化すると予想している。ただし、この変化の幅は、分類群によって大きく異なっている。今回の研究で得られた知見は、予想される気候変動の影響との関係で「安全に活動できる領域」内で生態系を管理することの重要性を強調している。
doi:10.1038/nature18608
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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