【天文学】ブラックホールの歴史から重力波の謎を解く
Nature
2016年6月23日
2015年9月に初めて検出された重力波を発生させたブラックホール連星系の歴史が明らかになった。今回の研究は、この歴史と将来的な重力波の検出と重力波の原因を解明するための枠組みを示している。詳細を報告する論文が、今週掲載される。
2015年9月にレーザー干渉計重力波天文台(LIGO)の観測機器によって検出された重力波(GW150914)の発生源として作用したのは、合体する2つのブラックホールだった。
今回、Krzysztof Belczynskiたちは、2つのブラックホールからなる連星系の形成に関する複数の高精度数値モデルを用いて、この連星系が連星の進化によって生じたと主張し、2つのブラックホールの合体によって生じた重力波現象の特性を予測した。Belczynskiたちは、これらの数値モデルに基づいて、GW150914を発生させたブラックホールがかつては非常に質量の大きい星(太陽の質量の40~100倍)で、その崩壊によってブラックホール連星が生じ、その後合体したという計算結果を示している。また、Belczynskiたちは、こうした前駆天体が形成したのはビッグバンの約20億年後だった可能性が非常に高いと推測しており、地上に設置された重力波天文台の観測機器が最適感度を達成すれば、それぞれの総質量が太陽質量の20~80倍に相当するブラックホールの合体が毎年約1,000件のペースで検出できるようになると予測している。
この研究に関連したJ.J. Eldridge のNews & Views論文では「Belczynskiらの研究は、GW 150914によって明らかになった星と宇宙の進化に関する新たな制約条件の影響を調べるものであり、極めて興味深い。重力波信号が検出されるたびに新しい事実が判明することになるだろう」と結論づけられている。
doi:10.1038/nature18322
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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