【進化】性選択がショウジョウバエの巨大な精子をもたらした
Nature
2016年5月26日
雄のショウジョウバエが非常に大きな精子(長さ5 cmを超えるものもある)をごく少量だけ産生するまでの進化過程について報告する論文が、今週掲載される。
動物の世界では、交尾相手を激しく争う性の個体の方が、交尾相手を獲得するためにもっと派手な装飾(例えば、枝角、真性の角、尾羽)を持っている。雄のショウジョウバエは、特にその比較的小さな体からして異常に大きな精子を産生し、これまでに発見された中で最も極端な性的装飾の事例の1つとなっている。ところが、通常、性選択で有利になるのは、少数の非常に大きな精子に貴重な資源を投資する動物種ではなく、小さな精子を大量に産生する動物種なのだ。
今回、Scott Pitnickたちは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の1種において相互作用する性特異的な形質の遺伝学的解析とさまざまな大きさの装飾を持つ種を対象とした雄と雌の生殖能力の健康と栄養への依存度に関する比較解析を組み合わせて行った。その結果明らかになったのは、精子産生が雄の状態と関連していることだ。つまり、最も健康状態がよく、最も質の高い雄が最も大きな精子を最も多く産生するのだ。このことは、雌に間接的な遺伝学的利益をもたらす。最も健康状態がよく、最も質の高い雄との間で生殖がうまくいく可能性が高いからだ。
また、Pitnickたちは、雄のショウジョウバエの精子の長さが雌の受精嚢の長さと共進化したことも明らかにしている。雌のショウジョウバエの受精嚢が長くなり、交尾頻度が高まることで交尾の成功率が高くなったため、雄のショウジョウバエは、巨大な精子を進化させて、競争相手の小さな精子を打ち負かしたとPitnickたちは考えている。
doi:10.1038/nature18005
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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