【進化】代謝が速くなってヒトの脳が大きくなった
Nature
2016年5月5日
ヒトが他の霊長類より大きな脳を進化させた理由は代謝率の増加だったと結論づけた論文が掲載される。また、今回の研究では、ヒトの体脂肪率が他の霊長類よりかなり高くなったのは、より活発に起こる代謝に必要なエネルギーを貯蔵する必要があるからだと示唆されている。
ヒトは、他の霊長類と異なり、寿命が長く、活発に繁殖し、体脂肪が多く、腸が比較的小さく、脳が比較的大きい。こうした形質は、より活発な代謝を必要とし、このことからヒトと類人猿では、エネルギー消費とエネルギー配分に大きな差があることが示唆されている。しかし、こうした差異の基盤となる機構は解明されていない。
今回、Herman Pontzerたちは、ヒトの大型サンプル(141人)と既知の大型類人猿全種を対象としてエネルギー消費量を直接測定し、アーカイブデータの再検討も行った。その結果、ヒトの代謝率が増加し、エネルギー収支も大きくなり、1日当たりの総エネルギー消費量(TEE)が、チンパンジーとボノボより400 kcal、ゴリラより635 kcal、オランウータンより820 kcalそれぞれ多いことが判明した。そして、ヒトのTEE増加は、基礎代謝率の増加によるところが大きいと考えられ、ヒトの臓器での代謝活性が亢進したことが示されているとPontzerたちは述べている。基礎代謝率は、安静時の身体機能を維持するために必要なエネルギー量のことで、kcal/日で測定される。さらに、Pontzerたちは、ヒトの体脂肪率が他の霊長類よりかなり高いことを明らかにし、これがTEEの増加と共進化してエネルギー要求量の増加という固有のリスクが軽減されたという考えを示している。
doi:10.1038/nature17654
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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