【創薬】マウスのうつ病に対して即効性と持続性があって副作用のない治療薬
Nature
2016年5月5日
ケタミンの分解によって生成する特定の物質が、即効性と持続性のあるケタミンの抗うつ作用の原因であることを報告する論文が、今週掲載される。このケタミン代謝物をマウスに単回投与すると、ケタミンの抗うつ作用が誘導されるが、ケタミンに伴う副作用は生じないことが明らかになった。
重症のうつ病に対する現在の薬物療法は、症状が軽減するまでに数週間かかることがあり、一部の患者には全く効き目がない。ケタミンという薬物は、現行の抗うつ薬に代わる有望な薬物として研究され、臨床試験で有効性が示されたが、薬物乱用を起こす可能性があり、自分自身と周囲からの離脱感(解離)を生じさせることもあり、幅広い臨床利用の可能性に対する制約となっている。
今回のTodd Gouldたちの研究では、ケタミンの代謝物である(2R,6R)-ヒドロキシノルケタミン(HNK)をマウスに1回投与したところ、ケタミンによって誘導される抗うつ作用に似た作用が認められ、それが少なくとも3日間持続した。また、Gouldたちは、(2R,6R)-HNKにケタミンの投与後に見られる副作用がなく、マウスにケタミンと(2R,6R)-HNKを選べるようにしたところ、ケタミンを自己摂取したことを明らかにした。今回の研究では、ケタミンの抗うつ特性がケタミン自体ではなく、実は(2R,6R)-HNKに起因するものであり、ケタミンの抗うつ作用が、これまで関係していると考えられてきた脳内の特定の受容体の阻害に依存していないことも判明した。
同時掲載のRoberto MalinowのNews & Views記事では、HNKの分子標的を同定し、作用機構を解明することで「特異性と有効性を高めた治療法の開発を前進させ、うつ病患者が病気の闇から抜け出せるようになるかもしれない」という結論が示されている。
doi:10.1038/nature17998
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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