【化石】北米のサルをめぐる謎が解き明かされる
Nature
2016年4月21日
これまで考えられていたよりかなり前から中米にサルが生息していたことが、パナマ運河の拡張工事で発見された7点の歯の化石から示唆されていることを報告する論文が掲載される。この歯の化石は、2100万年前のもので、北米と南米の間で哺乳類の移動があったことを示す最古の証拠となっている。
新世界ザル(広鼻猿)は、現代の北米と南米の熱帯生態系の一部となっている。かつて北米大陸と南米大陸は、海洋によって隔てられていたが、約350万年前にパナマ地峡によって両大陸はつながった。また、遺伝学的推定によれば、新世界ザルが北米大陸塊の南端である中米に到達したのは約350万年前のことだったとされるが、新世界ザルの化石が全く見つかっていないため、その歴史の解明は限定的なものとなっている。
今回、Jonathan Blochたちは、パナマ運河海盆(パナマ)のラス・カスカダス累層で歯の化石を発見し、これが北米大陸塊で初めて発見されたサルの化石だという考えを示している。Blochたちの分析によれば、新世界ザルが現存する5つの科(マーモセット科、オマキザル科、ヨザル科、サキ科、クモザル科)に分岐・多様化したのは約2200~2500万年のことだったとされる。そして、今回の化石の発見は、その時代に新世界ザルがカリブ海周辺に分布していたことを示す証拠だとBlochたちは結論づけている。また、Blochたちは、新世界ザルがそれ以上北方に移動することを抑制された理由は、気候の違いや大きな地理的障壁の存在ではなく、北米と南米の森林の進化史と生物種の違いであった可能性が非常に高いと考えている。
doi:10.1038/nature17415
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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