【神経科学】哺乳類の薄明視の解明に役立つ神経回路
Nature
2016年4月7日
マウスの研究で、網膜の桿体細胞と錐体細胞が関与し、色覚をもたらしている神経回路が同定された。色覚は、哺乳類の網膜にある色感受性を有する錐体細胞からのシグナルの比較に依存していると考えられている。ただし、これが薄明かりの中でどのように起こるのかは明確になっていない。この研究成果を報告する論文が、今週掲載される。
今回、Markus Meisterたちは、マウスの網膜の神経節細胞において新しいタイプの神経回路を同定し、論文でその説明をしている。つまり、Meisterたちは、神経節細胞がさまざまな波長の光に対していわゆる「反対色」応答をして、桿体細胞と錐体細胞が一緒に機能して、暗い月の光ででも色を感知できるようになっていることを明らかにした。Meisterたちは、こうした薄明りの中での色覚でマウスが得られる生態学的利益を探索し、マウスが薄明りの中でも活動的であることを指摘し、この新たに同定された色覚回路によってマウスが夜間に同種個体の尿の痕跡を感知できやすくなり、それが社会的コミュニケーションにおいて重要な役割を担っているという考えを示している。
Meisterたちは、この色覚回路が存在するために必要な全ての要素がヒトの網膜にも含まれていると主張している。さらに、ヒトの眼にこの回路が存在しているということは、例えば夕方の暗がりで青みがかった色が鮮明に見える傾向(いわゆる「青方偏移」)といった特異的な色覚を説明する上で役立つ可能性がある。
doi:10.1038/nature17158
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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