【生態】現在の島嶼の生物多様性は過去の海水準の変化によって形作られた
Nature
2016年3月31日
被子植物の研究が行われ、過去20,000年間の海水準の変化が現在の島嶼の生物多様性に大きな影響を残しているという見解が示されている。その詳細を報告する論文が、今週掲載される。
島嶼の生物多様性に関する現在の理解によると、島嶼が地質学的に静的な領域で生物種の移入と移出が起こっているとされるか、もっと動的な領域で数百万年以上にわたる地質学的な変化とテクトニクスの変化の影響を受けているとされている。しかし、いずれの仮説にも第四紀後期(約20,000年前から現在まで)のほとんどの時期の気候変動が組み込まれていない。第四紀後期には、氷冠の融解によって海水準が100メートル以上上昇し、陸塊が分割され、島嶼の面積が減った。海水準の変化は、島嶼の地理と生物多様性に影響を及ぼすことは明白だが、過去の海水準の変化が現在の島嶼の生物多様性に及ぼす影響については、これまで評価が行われていなかった。
今回、Patrick Weigeltたちは、全世界の184の島嶼(セイシェル、ハワイ諸島を含む)について、過去20,000年にわたって島の面積、隔離度、標高、気候が被子植物の多様性の重要な構成要素に及ぼした影響を分析した。その結果、Weigeltたちは、島嶼の生物多様性が海水準変化の測定可能な影響を受けているという考えを示している。特に、島嶼の特徴(特に島の面積)の変化が固有種(調査対象地域の原産で、その地域でのみ生息している生物種)の現在の多様性に有意な影響を与えていた。Weigeltたちは、約20,000年前に今より広かった島では、現在の固有種の数と割合が、現在の広さと遠隔性から予想される値を上回っていることを明らかにした。逆に、在来種の数と割合は、現在の島の特徴によって主に決まっていることも明らかになった。
Weigeltたちは、今後の島嶼研究には過去の地理的動態が島嶼間分散と多様化に及ぼす影響を組み込むべきだと提唱している。
doi:10.1038/nature17443
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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