Research Press Release
【惑星科学】若かりし頃の火星の姿
Nature
2016年3月3日
新たな地形学的証拠を踏まえた初期火星の地史の再解釈について報告する論文が、今週掲載される。火星には、太陽系で最大の火山岩複合体(タルシス地域)がある。タルシス地域は、37億年以上前に形成が始まり、火星の地表にはっきりとした隆起として存在している。また、タルシスの形成現象は、火星の自転軸の移動(真の極移動)を引き起こしており、そのため、現在では火山地帯が火星の赤道上に位置している。
これまでの学説によれば、タルシス地域の大部分は、ノアキス紀(約41~37億年前)の末期に形成され、火星上の谷網の方向性に影響を与えたとされていた。今回、Sylvain Bouleyたちは、シミュレーションを行って、タルシス火山地域が形成される前の火星の地形を再現した。その結果、Bouleyたちは、観測された谷網の方向では、タルシスの火山的負荷が存在する必要がなく、熱帯での降水と谷の切り込み(生成)がタルシス地域の隆起の形成と同時に起こっていた可能性が高く、ヘスペリアン紀(約37~30億年前)に長期の火山活動があったことを明らかにした。
Bouleyたちは、タルシスの隆起の形成期に降水または降雪があったと結論づけ、今回作成された地形図が、火星の地史の最初の数十億年間を調べるための新たな枠組みになるという考えを示している。
doi:10.1038/nature17171
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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