【がん】高脂肪食は腸組織の再生とがんの発生に影響を及ぼす
Nature
2016年3月3日
マウスと腸管オルガノイドにおいて、高脂肪食が、腸幹細胞(ISC)の数と代謝回転を増やし、腸前駆細胞の腫瘍産生能も高める可能性のあることを報告する論文が、このたび掲載される。今回の研究では、すでに知られている高脂肪食と大腸がんの関連性の基盤となる可能性のある生物学的機構も明らかになった。
幹細胞は、無限に自己複製できるが、前駆細胞(元の幹細胞よりも特殊化した状態に分化した細胞)が分裂できる回数には通常限りがある。また、ヒトの肥満と大腸がんの結びつきを断定した重要な疫学データが発表されているが、食餌が腸幹細胞と前駆細胞の生物学的性質に影響を及ぼす機構については、よく分かっていない。
今回、David Sabatiniたちは、脂肪分60%の食餌を9~14か月にわたって与えられたマウスと標準的な食餌を与えられた対照群のマウスを比較した。その結果、高脂肪食によってペルオキシソーム増殖因子活性化受容体δ(PPAR-δ)シグナル伝達が活性化されて、腸幹細胞の数が増え、再生能が向上することが分かった。そしてSabatiniたちは、PPAR-δが活性化すると前駆細胞が(幹細胞のように)オルガノイドを生成する能力を持つようになり、マウスの特定の腫瘍抑制遺伝子(Apc)を持たない前駆細胞は腸腫瘍を形成する能力を持つようになることを明らかにした。Sabatiniたちは、食餌によってPPAR-δを活性化することにより腸幹細胞と前駆細胞の機能が改変され、腫瘍を開始させる能力も増強されると結論づけている。
doi:10.1038/nature17173
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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