【海洋生物学】海洋酸性化から回復すればサンゴの成長は促進される
Nature
2016年2月25日
サンゴ礁の上を流れる海水のアルカリ度を高め(酸性度を低下させ)ると、サンゴ礁の成長が促進されることを報告する論文が、今週掲載される。これまでにサンゴ礁の成長が鈍化していることが明らかになっているが、今回の研究は、天然のサンゴ礁群集で初めての制御された野外実験を実施することで、海洋酸性化の影響を他の要因(例えば、海水温、沿岸の環境汚染、魚類の乱獲)から切り離すことを目的とした。
人間活動による年間全球二酸化炭素排出量のおよそ4分の1は、海洋に吸収され、海洋の酸性度が上昇している。海洋酸性化は、サンゴ礁生態系を脅かす要因の1つだと推定されているが、その影響を他の要因から分離して明らかにすることは難しい。
Rebecca Albrightたちは、グレートバリアリーフ南部のワンツリーリーフで今回の研究を行った。このワンツリーリーフには、干潮時に海洋から孤立する礁湖があるが、Albrightたちは、そのうちの1つの礁湖の海水に水酸化ナトリウムを添加して、そのアルカリ度を高め、次に、この海水がサンゴ礁の上を流れてから別の礁湖に流れ込む際のアルカリ度の変化を測定した。その結果、Albrightたちは、サンゴ礁の成長の指標であるサンゴ礁群集の純石灰化量の増加だけを原因とするアルカリ度の変化を独立に分析することに成功し、海洋の化学的性質を産業革命以前の状態(現在より海洋の酸性度が低く、アルカリ度が高い状態)に戻せば、石灰化が増進することを明らかにした。
同時掲載されるJanice LoughのNews & Views記事によれば、「彼ら[Albrightたち]は、他の条件を変えずに時間を戻すことで、サンゴ礁の純石灰化量が現在より約7%多かったと考えられることを明らかにし、海洋酸性化によるサンゴ礁の成長抑制がすでに始まっていたという考えを示している」と記されている。
doi:10.1038/nature17155
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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