【行動】残酷な親切心
Nature
2016年2月25日
人間は自分が直接的な影響を受けない利己的行動を罰することがあるが、その理由の説明に役立つと考えられる個人レベルのモデルを示した論文が、今週掲載される。今回の研究では、このモデルが成人において妥当なものであることが確認され、第三者罰(TPP)によって罰を与える者の信頼性を示すシグナルが送られ、懲罰の初期コストを上回る評判上の利益が得られることが明らかになった。
TPPは、文化の違いを超えて普遍的に存在し、群選択によって進化したと考えられている。その理由は、TPPが協力を奨励するために、罰を与える第三者のいる集団が選択によって有利になる可能性があるからだ。しかし、TPPが罰を与える者に対して個人レベルの利益をもたらすかどうかは不明のままだ。
今回、David Rand、Jillian Jordanたちの研究グループは、TPPの理論モデルを開発し、成人が参加する経済ゲーム実験において、この理論モデルの妥当性を検証して、個人が利己的な他者を罰することで、自分が利己的でないというシグナルを発するようになることを明らかにした。また、Randたちは、罰を与える者にとってTPPが唯一利用できるシグナルである場合には、TPPが信頼性を表す強力なシグナルとなるが、援助を行うという犠牲の大きな選択肢も存在する場合には、TPPのシグナルの強さが失われることを明らかにした。TPPは利他的行為のように思われるが、実際には、罰を与える者の信頼性に関する認識を高めることによって罰を与える者の自己利益になることが今回の研究で明らかになった点もRandたちは指摘している。
doi:10.1038/nature16981
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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