CRISPRスクリーニングで見つかったHIV感染症の新たな治療標的
Nature Genetics
2016年12月20日
CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いてHIV感染に必須の細胞因子が新たに同定された。これらの細胞因子を不活化したところ、細胞の生存能を損なわずにHIV感染を予防できたため、これらの細胞因子が新たな薬剤や遺伝子治療の標的候補として有望視されている。この研究成果を報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。
今回、David Sabatini、Eric Lander、Nir Hacohen、Bruce Walkerその他の研究者からなるチームは、CRISPR/Cas9を用いてHIVの自然宿主細胞であるT細胞のライブラリーを作成した。このライブラリーでは、ヒトゲノムに含まれる遺伝子の大半が個別的に不活化された。次にSabatiniたちは、このT細胞のライブラリーにHIVを感染させて、遺伝子変異によってT細胞がHIV感染に抵抗性を示す一方でT細胞の正常な機能は損なわれないという遺伝子を同定するためのスクリーニングを行った。その結果、そのような遺伝子が合計5個同定された。そのうちの2つは、HIV感染に重要なことがすでに知られており、残りの3つが今回新たに同定された。そしてSabatiniたちは、機能実験による追試と健康なヒトのドナーから単離されたT細胞において今回の発見を検証した。
古い技術に依拠してHIV感染に重要な宿主因子のスクリーニングを行った過去の研究では、数多くの標的候補が同定されたが、複数のスクリーニングで同じ標的候補が同定される例がわずかしかなかった。このことは、結果の偽陽性率が高かったことを示唆している。今回のスクリーニングの結果は、新たな抗HIV治療法の有力な標的候補を生み出す可能性がある。
doi:10.1038/ng.3741
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