生理:呼吸にとって重要な役割を果たすセンサータンパク質
Nature
2016年12月22日
Piezo2タンパク質にマウスの肺の過膨脹を防ぐ作用があることを報告する論文が、今週、掲載される。今回の研究で、これまで皮膚の触覚に関係するとされていたPiezo2が、正常呼吸を維持するための調節を行い、出生時の最初の肺膨張にも必要なことが判明した。この新知見は、睡眠時無呼吸や慢性閉塞性肺疾患といった呼吸器疾患を解明するための手掛かりとなる可能性がある。
ほとんどの哺乳類は、へーリング・ブロイウェル反射という応答によって肺の過膨脹を防いでいる。へーリング・ブロイウェル反射は、さらなる吸入を直ちに止める作用があるが、この反射の働きの詳細は解明されていない。Piezo2については、細胞が機械的な力を感知して応答することを助け、感覚ニューロンに豊富に含まれていることが、これまでに明らかになっている。
今回Ardem Patapoutianの研究グループはマウスを使った研究で、Piezo2が肺の膨張を調節する役割について調べた。今回の研究では、成体マウスの特定のニューロンにおいてPiezo2を欠損させると、へーリング・ブロイウェル反射が損なわれ、肺の1回換気量が増加し、マウスが通常より大きく息を吸い込むようになった。また、Piezo2を欠損したマウスが、死産で生まれた。
以上の結果は、Piezo2が気道の伸展を感知し、新生仔マウスの呼吸を確立し、成体マウスの正常呼吸を維持するための調節を行っていることを示している。Patapoutianたちは、伸展センサーであるPiezo2の作用の異常が、慢性閉塞性肺疾患、乳幼児突然死症候群、成人睡眠時無呼吸などの呼吸器疾患に関係している可能性があるという考えを示している。ただし、ヒトの呼吸におけるPIEZO2の役割については、さらなる研究が必要とされる。
doi:10.1038/nature20793
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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