かつて全てのコウモリは音で周りが見えていた
Nature Ecology & Evolution
2017年1月10日
今週掲載される論文によれば、全てのコウモリ種の内耳は、反響定位を行う能力のない種であっても、最初は反響定位に求められる形で発生するのだという。その研究は、反響定位能力の進化が複数回ではなく1回だけであり、一部の種でそれが失われたのだということを示唆している。
コウモリは、喉頭で発生させたソナーシグナルの反響を内耳で検知することによるナビゲーション能力(「喉頭反響定位」という能力)で知られているが、一部のコウモリ種はこの方法で反響定位を行うことができない。化石証拠も遺伝学的証拠も、喉頭反響定位を利用するコウモリが単一の進化群を形成しないことを示唆している。このことは、反響定位の進化が2回以上行われたか、さもなければ進化してから一部の種で再び失われたかのいずれかであることを意味している。
Shuyi Zhang、Emma Teeling、Zhe Wangたちはこの問題に取り組むため、コウモリの成体の内耳を見るのではなく、胎仔および出生直後のコウモリで内耳がどう発生するのかに着目した。喉頭反響定位を行う種の成体の内耳の蝸牛は、他の種と比較してはるかに大きい。研究チームは、7種のコウモリ(喉頭反響定位を行うもの5種、および行わないもの2種)ならびに反響定位を行わない他の哺乳動物5種で蝸牛の発生を調べた。その結果、全てのコウモリ種には蝸牛の迅速な初期発生が認められたが、他の哺乳類にはそれが認められなかった。ただし、反響定位を行わないコウモリでは、初期に拡大した蝸牛の発生に劇的な減速が見られ、他の哺乳類のものに近い成体蝸牛が生じた。
遺伝子でも化石でもなく胚発生に目を向けることにより、研究チームは長年の進化の謎を解明した。その研究成果は、コウモリの喉頭反響定位の進化的起源がただ1つであることを示唆している。
関係するNews & Views記事では、Brock FentonとJohn Ratcliffeが、コウモリの他の特徴の進化に照らしてその研究結果を考察している。
doi:10.1038/s41559-016-0021
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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