Research Press Release
生物工学:電子スイッチで細菌を制御する
Nature Communications
2017年1月18日
細菌の電子制御が実証されたことを明らかにした論文が、今週に掲載される。さまざまな細胞の遺伝的挙動を精密に制御できるようになったことで、工業的利用とバイオハイブリッドデバイス(例えば細胞を利用したバイオセンサー)への道が開かれることになると考えられる。
細胞の挙動を操作し、誘導する能力は、合成生物学によって向上した。これまでのところ、光や磁気、電波を用いて遺伝子発現を制御する方法が実証されている。今回、William Bentleyの研究チームは、電子的入力を用いることによっても細胞を制御できることを明らかにし、遺伝子発現を制御する天然の細菌タンパク質を電子信号によって活性化する「電子遺伝学的」回路を実証した。Bentleyたちは、このシステムを利用して、遺伝子発現を制御し、細菌の遊泳を誘導した。また、Bentleyたちは、1つの細菌群が電子信号を解釈し、この情報を別の細菌群に伝えて、その遺伝子発現を変化させる細胞情報中継装置を作製した。
今回の研究は、原理実証研究であり、現在のところ直接応用は行われていないが、細胞の遺伝子発現と挙動を電子制御することは、精密かつ迅速な応答が必要な状況において役に立つ可能性がある。こうした状況には、工業的利用可能性や生物工学的利用可能性(例えば特定の産物を得るために代謝的に改変された細菌を用いる場合)が含まれているかもしれない。
doi:10.1038/ncomms14030
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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