【再生医学】種を超えた動物間で作成された臓器の移植に成功
Nature
2017年1月26日
ラットの体内で成長したマウスの膵島を糖尿病マウスに移植すると、長期間にわたって正常に機能することを明らかにした論文が、今週のオンライン版に掲載される。この原理証明研究では、1つの動物種の臓器を別の動物種の体内で成長させる方法が実証された。この方法は、いつの日かヒトに移植可能な組織の作製に役立つ可能性があるが、その前に数多くの技術的課題と倫理的問題と法的問題に取り組む必要がある。
今回、東京大学医科学研究所の中内啓光(なかうち ひろみつ)の研究チームは、膵臓が発生できないラット胚にマウスの多能性幹細胞を注入する方法を用い、この幹細胞が膵島細胞に分化したところで、膵島細胞を単離して糖尿病マウスに移植した。すると、この糖尿病マウスの血糖値が正常に戻り、その状態が1年以上続いた。この実験では(移植後の5日間を除き)免疫抑制剤を長期投与する必要はなかった。
インスリン産生細胞が破壊された1型糖尿病の症状を薬物療法によって安定させられない場合、膵島移植が患者にとっての希望になることがある。しかし、患者に適した臓器提供者の組織を入手することは難しく、この問題は、移植を待つ何千人もの糖尿病以外の患者とも共通している。多能性幹細胞は、臓器置換療法に用いる細胞と組織を無制限に作製できる可能性を秘めているが、ヒトに応用する場合には、今回の研究論文に概説されたシナリオを修正する必要がある。ヒトとは別の動物種で臓器を作成する場合には、体の大きさと進化距離がヒトに近い動物種、例えばヒツジやブタ、または非ヒト霊長類を用いる必要のあることが論文に記されている。
doi:10.1038/nature21070
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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