【惑星科学】地球の構成単位の特性を解明する
Nature
2017年1月26日
地球の形成期に地球に降着した隕石物質の組成に関する手掛かりをもたらす2編の論文が、今週掲載される。地球は、さまざまな起源の月サイズの天体と火星サイズの天体の降着によって形成されたが、このように地球の構成単位となった隕石物質の同位体組成を明らかにすることは難しい課題となっていた。
Nicolas Dauphasは、マントル中の金属に対する親和性の異なる元素の特徴を用いて、地球の構成単位の同位体特性の経時変化を解明できることを明らかにした。つまり、酸素、カルシウムのような親石元素は、岩石質マントル中に残留する傾向があるのに対して、親鉄元素は、マントル下に位置する核に移動する傾向があるというのだ。こうした解析結果は、地球に降着した隕石の経時変化があまり大きくなく、エンスタタイト隕石に類似する同位体組成の物質を常に大量に含んでいることを示唆している。また、この知見は、地球とテイア(地球に衝突して月を作り出したとされる仮想の大型天体)の同位体組成が似ていることを説明する上で役立つ可能性もある。
一方、Mario Fischer-GoddeとThorsten Kleineの論文では、地球が、その成長期全体を通じて水などの揮発性物質を獲得しており、コンドライト(石質隕石の一種)や彗星の降着によって獲得していた地球史の後期に限定されないと考えられることを報告している。現在の地球のマントル中に存在する金、鉄、ルテニウムのような親鉄元素は、月を形成した巨大衝突後に蓄積した「レイトベニア」物質によって生じたと考えられている。今回の研究では、全てのコンドライトにルテニウムの同位体組成が見られ、コンドライトの形成地点が太陽から離れるほど地球のマントルとの同位体組成の違いが大きくなることも明らかになった。このことは、レイトベニアが地球上の揮発性物質と水の主要な供給源ではなかったこと、そして、レイトベニアの組成がエンスタタイト隕石の組成に似ていたことを示唆している。
doi:10.1038/nature20830
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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