月における生命の足跡
Nature Astronomy
2017年1月31日
月は数十億年にわたって地球からの酸素を周期的に浴びているという報告が、今週のオンライン版に掲載される。この研究は、月の土が地球大気の歴史的な記録を保持している可能性を示唆している。
月の公転軌道のうち、地球の磁場が太陽と月の間に位置して高エネルギー粒子の方向を変える5日間を除いて、月の表面には高エネルギー粒子の太陽風が継続的に衝突している。地球からのイオンは、太陽風が遮られる5日間であれば月に到達することができる。この過程は(月の土の同位体組成に基づいて)窒素と希ガスに対して考えられていたが、地球でもっとも重要な気体である酸素に対する決定的な証拠は存在していなかった。
今回、大阪大学の寺田 健太郎(てらだ けんたろう)の研究チームは、月と月周回衛星「かぐや」の両方が太陽風から遮られるときに衛星から得たデータの解析によってこの謎を解いた。寺田たちは「地球風」が酸素イオンを運んで月にまで届き、月表土の深さ1マイクロメートルという浅い層に入り込んでいるという明らかな証拠を発見した。また、地球の大気中に酸素がかなりの存在度で出現して以来、およそ25億年前からこの過程が起こり続けていることも確認された。
地球上の大部分の酸素が生物圏によって生じたため、この結果は月がそのほとんどの歴史にわたり生命によって生成された物質で継続的に「汚染されていた」ことを示唆する。寺田たちは太陽風と地球風の寄与を分離することは難しいと強調するが、今回の発見は地球の古代大気が月の土に保存されている可能性を示している。
doi:10.1038/s41550-016-0026
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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