【免疫】臨床試験で有望な結果が得られたマラリアワクチン
Nature
2017年2月16日
最終接種日から少なくとも10週間にわたって(ワクチン作製に用いた原虫株による)マラリア感染に対する完全な防御免疫を達成できるマラリアワクチンが、このほど行われた臨床試験によって明らかになった。このマラリアワクチンの臨床試験は、合計35人の被験者に対して行われ、重篤な副作用は認められなかった。このワクチンがマラリア予防のためのワクチン接種プログラムの開発に適したものかどうかを見極めるためには、ワクチンの最適化をさらに進める必要がある。
マラリアに対する最高レベルの防御免疫は、マラリア原虫の細胞、つまりヒト感染性熱帯熱マラリア原虫の胞子虫(PfSPZ)あるいはそれを弱毒化したものを用いて免疫応答を誘発することを目的としたワクチン接種法によっても達成されていることが報告されている。これまでの研究ではカを用いて生きたPfSPZを送達していたが、今回、Stephen Hoffmanの研究チームは、臨床状況下での実用性が高い送達方法である感染性PfSPZの直接静脈接種について調べた。今回の臨床試験では、投与量を複数設定して、このワクチンを健康な被験者に投与し、抗マラリア薬のクロロキンも合わせて投与した上で、このワクチンの作製に用いたマラリア原虫株に感染させた。このワクチンを4週間おきに合計3回接種した場合には、投与量が少ないグループでは、一部の被験者だけが防御免疫を達成したが、投与量が最も多いグループでは、9人の被験者が最終接種日から少なくとも10週間にわたって完全な防御免疫を達成した。これと同じ投与量のワクチン接種を短い周期で行った場合(5日おきに合計3回の接種)には、8人の被験者のうち5人(63%)が防御免疫を達成した。
Hoffmanたちは、このワクチンがマラリア予防のための集団接種の一環として役立つ可能性を有するかどうかを見極めるためにさらなる研究が必要になると指摘しており、今後の臨床試験では、被験者集団の多様性を高めてワクチンの有効性を評価し、さまざまなマラリアの感染形態とマラリア原虫株に対するワクチンの有効性を調べ、防御免疫の持続期間を明らかにすることを提案している。
doi:10.1038/nature21060
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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