【環境】雨が降ると微生物が大気中に運ばれる
Nature Communications
2017年3月8日
土壌中の細菌が雨滴によって大気中に拡散しているという考えを示す論文が、今週掲載される。この機構は、今回初めて提示されたものであり、細菌が遠くまで拡散する過程について解明する上で手掛かりになると考えられている。
これまでの研究では、雨滴が土壌に衝突するとエアロゾル(大気中に浮遊する水滴)が生成することが明らかになっていた。土壌が細菌にとって中間的な生息地の機能を果たしている可能性はあるが、細菌がエアロゾル化過程を生き延びることができないと考えられていたため、細菌がどのようにして大気中に移動するのかが明らかになっていなかった。
今回、Cullen Buieの研究チームは、高速度カメラ、蛍光イメージングとモデル実験を行って、1個の雨滴によって土壌表面に生息する細菌の0.01%が大気中に移動して1時間以上生き続けることを発見した。この数値を見ると、大気中に移動する細菌の割合が低いように思えるが、Buieたちの計算によれば、土壌中に生息する細菌の総量の1.6%~25%(それぞれの地域での土壌の種類と気候によって異なる)が全球的な降水によって陸上から大気中に運ばれるとされる。土壌細菌のエアロゾル化の可視化は、3種の非病原性菌株について行われた。
以上の知見は、細菌が大気中に運搬される過程を説明しており、気候と農業生産性と人間の健康にとって重要な意味を持つものだが、この機構のために大雨の後に疾患の発症者が増えることを示す証拠はない。
doi:10.1038/NCOMMS14668
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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