【免疫】チンパンジーのためのエボラウイルス経口ワクチン
Scientific Reports
2017年3月10日
チンパンジーをエボラウイルスから守ることができると考えられる経口ワクチンを示した初期研究結果の報告が、今週掲載される。著者は、経口ワクチンの投与が、絶滅危惧種を病原体の脅威から守る安全かつ効率的な方法として有望だという考えを示している。
全世界のゴリラの約3分の1がエボラ出血熱によって死んでいる。類人猿に対する一定種類の疾患の脅威はワクチンによって予防可能だが、ダート銃を用いる従来の投与法を熱帯の密林に低密度で生息する動物に適用することには困難を伴う。
今回、Peter Walshの研究チームは、10頭の飼育チンパンジーを用いてエボラウイルスに対するワクチンfilorab1の試験を行った。そのうちの6頭については、鎮静状態でウイルスの経口投与が行われ、残りの4頭には筋肉内注射でワクチン投与を行った。そして、投与後最長28日間にわたって、エボラウイルスに対する抗体の血中濃度の測定が続けられた。この試験では、経口ワクチンを投与されたチンパンジーのエボラウイルスに対する抗体のレベルが上昇し、その上昇率が筋肉内注射でワクチンを投与されたチンパンジーの場合と非常によく似ていたことが明らかになった。しかし、今回の研究では、ワクチン接種後のチンパンジーをエボラウイルスにチャレンジ感染させておらず、経口送達の防御効果を断定するにはさらなる研究が必要となっている。
Walshたちは、このワクチンの単回経口投与によって生じる免疫応答が、密林で発見することが難しい野生の類人猿の野外でのワクチン投与の1つの利点になる可能性があると主張しており、野生の類人猿を用いた野外試験が必要であると同時にさらなる研究を重ねて経口餌を試作し、高温の森林という条件下でも利用可能な状態を維持できるようにワクチンの熱安定性を向上させる必要がある点を指摘している。
doi:10.1038/srep43339
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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