【ウイルス】鳥インフルエンザウイルスがヒト細胞に感染する機構
Nature Communications
2017年3月22日
A型インフルエンザウイルス(H7N9亜型)が鳥類とヒトの細胞に効率的に感染するのは1つのヌクレオチド(RNAの構成単位)によるものであることを明らかにした論文が、今週掲載される。H7N9ウイルスは、2013年頃からヒトに散発的に感染し、重篤な症状を引き起こしている。今回の研究によって得られた知見は、ヒトが鳥インフルエンザウイルスに感染して疾患を発症する機構について解明を前進させると考えられている。
多くのインフルエンザウイルス株は鳥類を自然宿主とし、数種類のウイルス株だけがヒトにも感染して疾患を引き起こすが、鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染する機構は十分に解明されていない。なお、ウイルス株がヒトの細胞に適応してしまうと鳥類の細胞における適応性が低下することが多い。今回、Honglin Chenの研究チームは、鳥類の間で循環するH7N9ウイルスのゲノムにおいて、ヒト細胞でのウイルス複製を促進しつつ、鳥類の細胞でのウイルス複製を維持する1つのヌクレオチド配列を同定した。このヌクレオチド配列は、2000年初頭にH9N2ウイルス株に出現し、その後さまざまな鳥インフルエンザウイルスに広がった。Chenたちは、このヌクレオチド配列がウイルス複製を行うヒト宿主の細胞装置に結合するRNA配列モチーフの一部であることを明らかにした。
この鳥インフルエンザウイルスにおけるヌクレオチド配列の拡散の監視を現在実施中の監視プログラムの一環として行えば、ヒトに感染して疾患を発症させるウイルスの同定に役立つ可能性がある。
doi:10.1038/ncomms14751
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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