Research Press Release

果実は大きな脳の進化を促進する

Nature Ecology & Evolution

2017年3月28日

霊長類の脳サイズを的確に予測するのは、社会生活の複雑さよりも食餌である、という論文が、今週のオンライン版に掲載される。この種の分析としてはこれまでで最大のものとなった今回の研究は、ヒトおよび一部の霊長類群が他の多くの動物と比較して大きな脳を進化させた理由を説明する従来の仮説に対し、疑問を投げ掛けている。

霊長類の脳サイズの進化を調べたこれまでの研究は、種の典型的な集団の平均的な構成個体数と体の大きさに対する脳サイズとの間に相関を見いだしている。しかし、社会的複雑性に関する別の尺度(たとえば、種が一夫一妻制かどうかなど)を考えると、結果には一貫性がなく、環境中の他の潜在的推進要因が探られていない。

Alex DeCasienたちは、非ヒト霊長類の脳サイズに関して、これまでに異なる140種以上から集めた最大のデータセットをまとめ上げ、脳サイズと複数の社会性尺度(集団サイズ、社会システム、および配偶行動)と摂餌習慣の関係を探った。その結果、脳サイズにはどの社会性尺度とも関係が認められず、食餌の予測力の方がはるかに強力であることが分かった。

それぞれの種の進化的近縁度および相対的な体の大きさを考慮して、研究チームは、果実を食べる霊長類の脳組織が草や葉を食べる種と比較して約25%大きいことを発見した。その分析では、果実食が大きな脳の進化につながる理由は明らかにされていないが、研究チームは、認知的要求(果実の位置の想起および手作業での果肉の取り出しに関連)とエネルギー報酬(低エネルギーの草や葉と比較した高エネルギーの果実の消費と関連)との組み合わせによってそれが促進された可能性を示唆している。

関連するNews & Views記事では、Chris Vendittiが次のように述べている。「今回の研究によって霊長類や他の哺乳類の認知的複雑性を解明する研究に改めて注目が集まり、この分野が再び活気づくことは間違いないだろう。しかし、残されている問題はまだ多い」。

doi:10.1038/s41559-017-0112

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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