【持続可能性】食品貿易によって地下水源が枯渇する過程
Nature
2017年3月30日
食用作物を生産する際に地下水源を過剰に利用している地域から食用作物を主に輸入している国々に世界人口の大多数が集中しているという報告が、今週掲載される。地下水源を枯渇させている国と作物と食品貿易関係を具体的に明らかにできれば、世界の食料生産と地下水資源管理の持続可能性を高める活動を推進する上で役立つと考えられている。
重要な食料生産地帯では、主に灌漑のための地下水の揚水によって帯水層(大きな地下貯水池)が急速に枯渇している。そのため、各地域の食料生産の持続可能性だけでなく、国際食品貿易を介して世界の食料生産の持続可能性が脅かされているのだが、国際食品貿易が地下水の枯渇に与える影響の詳細は、十分に解明されていない。今回、Carole Dalinたちの研究チームは、この両者の関係の定量化に向けて前進し、持続不可能な地下水の汲み上げの約11%が国際食品貿易と結び付いており、その3分の2がパキスタン、米国、インドからの輸出(主にコメとコムギ)であることを明らかにした。そして、メキシコ、イラン、中国、米国の4カ国は、急速に枯渇する帯水層の水で灌漑されている土地で作物を生産し、そうした土地で生産された作物の輸入もしているため、食料と水の安全保障が脅かされる危険が高いことも明らかになった。
Dalinたちは、灌漑による地下水枯渇を最小限に抑える方法をいくつか提案している。例えば、乾燥に強い作物の栽培を増やすことや地下水の揚水規制だ。また、Dalinたちは、枯渇している帯水層系を使って栽培された食用作物を輸入している国々が主導的役割を果たして、持続可能な灌漑方法を普及させる必要があるという考えを示している。
doi:10.1038/nature21403
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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