Research Press Release
【環境】個別漁獲枠制度によって漁獲競争が緩和される
Nature
2017年4月6日
個別漁獲枠制度によって漁獲競争が緩和され、漁期が長くなることを示唆する研究結果を報告する論文が、今週のオンライン版に掲載される。この知見は、市場原理に基づいた規制(例えば、漁業における個別漁獲枠制度)の適用拡大をめぐる現在の論争が正しい情報に基づいて進められるようにする上で役立つ可能性がある。
漁獲競争が世界中で起こっており、そのために漁期が短くなり、漁業資源が脅かされ、生態系が被害を受け、経済的な無駄が生じている。個別漁獲枠制度とは、漁業者、漁船または漁業組合に対して漁獲可能総量を配分する制度だが、これが漁獲競争を緩和すると考えられている。しかし、その証拠としてこれまで得られたものは事例報告にとどまっており、個別の漁場に関するものに限られていた。今回、Martin Smithたちの研究チームは、個別漁獲枠制度を導入している米国内の39か所での漁業と個別にマッチングした対照を比較し、個別漁獲枠制度の有益な影響が米国全土で幅広く見られることを明らかにした。
個別漁獲枠制度は、世界の水産政策に関して議論を呼んでいる問題であり、公正さ、所得の減少、業界再編をめぐって懸念が生じている。世界各国の政府が個別漁獲枠制度を用いた漁業管理を拡大することの是非を論じている中で、今回の研究は、この問題に関連した情報源としてタイムリーなものになっている。
doi:10.1038/nature21728
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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