【微生物学】遺伝子組換えプロバイオティクスを用いた感染症治療の可能性
Nature Communications
2017年4月12日
プロバイオティクスとは健康増進機能の可能性を秘めた微生物のことだが、このほど動物モデルを用いた研究で、遺伝子組換えを施したプロバイオティクスが細菌感染を予防、緩和することが明らかになった。この研究成果を報告する論文が掲載される。
細菌を遺伝的に操作すると特定の病原体を死滅させることができる。過去の研究では、病原体である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の存在下で大腸菌の実験室株に一定の遺伝的操作を行ったところ、大腸菌が破裂して毒素を放出し、緑膿菌を選択的に死滅させた。ただし、この方法が動物の感染症でもうまくいくのかどうかは明らかでない。
今回、Matthew Changたちの研究グループは、この遺伝系を改良した上で、これを利用して遺伝子組換え大腸菌Nissle 1917株を作製した。大腸菌Nissle 1917株は、特定の腸疾患の症状改善に有益な効果のあるプロバイオティクスであることが明らかになっている。この改良された遺伝系の新しい特徴の1つは、遺伝子組換え大腸菌Nissle 1917株に緑膿菌のバイオフィルム(表面に付着する凝集体で分解しにくい)を不安定化させる遺伝子だ。次にChangたちは、この遺伝的に操作したプロバイオティクスの有効性を緑膿菌による腸感染症の動物モデル2種類(マウスと線虫)を用いて検証し、既に定着した感染症の治療より感染症の予防を効率的に実現できることを明らかにした。
Changたちは、この遺伝的に操作したプロバイオティクス細菌について、その通常のプロバイオティック関連の効能のために自由に投与できる一方で、特定の病原体に対する防御効果も発揮できる可能性があると考えている。以上の新知見をヒトに生かせるかどうかを見極めるには、さらなる研究が必要になると考えられている。
doi:10.1038/ncomms15028
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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